第46話     中国人海外旅行1億人時代の到来に思う

湯  麗 敏

 

  中国国家観光局によると2014年11月までに、中国本土から外国へ旅行に出かけた人の延べ数が1億人を突破した。そのうちに、韓国、タイ、日本、アメリカ、ベトナムとシンガポールという六か国を訪れた中国人観光客の数はいずれも百万人以上を越えていたそうだ。

  そして膨大な外国への観光客の中には、リピーターが40%を越えており、また同時に海外での中国人観光客の消費額が2013年は1020億ドルに達していた。世界一の観光消費国になったことが知られている。

  こんな中で、日本を訪れた中国人観光客は2012年には143万人、2013年にやや減ったというものの、131万人にも達し、2014年の上半期だけではもう100万人に達し、8月末に154万人に達した。去年の同期と比べると増加率が88.2%になり、2014年の訪日中国人観光客は11月末に222万人に達していた。さらに日本滞在期間に平均1人の消費額は20万円ぐらいになっている。

  21世紀に入ってから、だんだん豊かになった中国人は生活レベルが上がることに従って、多種多様な消費にお金を使いたがり、特に文化的精神的な面での享受を求めるのが目立っている。一つ例を取ってみれば、ほかでもなく、「観光に行く」ということである。もちろん、国内旅行だけではなく国際観光に出かけることが大変はやっている。まさに中国も観光の時代に入りつつある。

  中国人海外旅行1億人になった要因について、いくつか考えられる。

1.経済の余裕があったから

  「観光は先進的な娯楽である。それは、強固な経済基盤、整備された交通網、高度な生活水準、自由に使えるお金、ゆとりのある時間などを基礎としている。」と駒田井正氏の著書にある言葉(「21世紀の観光とアジア・九州」九州大学出版会)の通りに、中国では特に国営企業や外資系企業に勤めている大卒のホワイトカラー階層の人々、また公務員など、安定した職業についていた人たちは可処分所得が高い。彼らは殆ど中国の改革開放政策を実施してから80年代以後に生まれた世代であり、そして夫婦共働きなので、経済力がある。休暇があれば、子どもを連れて家族旅行の形で海外に出かけるのが普通なことになりつつある。

ところが、初めて年間1千万人を越えた2000年から14年間で旅行者が10倍の急増ぶりにあたって、中国国家観光局の報道官は「それが中国の経済と社会の発展の大きな成果だ」と強調した。まったくその通りだと思う。   

2.インターネット、情報社会の発展

  海外旅行に行っている人々の大多数は、わりと若者が多い。若者たちは情報感度が高く、パソコンやネットを使いこなしているので、興味がある情報を漏れなくキャッチするから。例えば日本の観光情報、日本政府の観光政策、観光プロモーションの方針、いろいろな魅力がある観光客誘致の宣伝を行っていることに対して、いち早くインターネットを通じて情報を入手し、プラス思考で行動に移すのが大抵若者である。一方、観光客に向けの高速通信サービス環境も日に日に改善されることも確かなことである。例えば、日本の関係会社は、訪日観光客が海外で使っていたスマホやタブレット端末を日本国内でも使えるようにSⅠMカードを無料で配布したりする努力も見せているから、好奇心が強い若者たちが海外旅行に行きたがるようになりつつある要素にもなる。

3.有給休暇制度の充実

  2013年2月に中国国務院弁公室は「2013-2020年国民観光・レジャー綱要を発表した。「綱要」には、国民観光・レジャーの発展目標として、「2020年までに、都市・農村部住民の観光・レジャーレベルを大いに引き上げ、国民の観光・レジャーの質を著しく高め、小康社会(やや豊かな社会)に相応しい現代国民観光・レジャー体系を基本的に確立する」ことが打ち出された。

  「綱要」には、また民間企業・非企業法人・従業員を雇用している個人経営者など各組織で働く従業員の有給休暇を保障するための各措置を完備し、有給休暇の完全導入を推進していく。(人民網日本語版2013年2月19日)

  このような国家としての方針のもとで、休暇を充実に過ごしたい人が国内だけではなく国外への観光旅行に出かけるようになった。有給休暇制度の確立と実施することにより、今後も海外旅行客の増加に拍車がかかると思われる。

4.関係国政府の入国ビザ発給条件の緩和

  最近、日本をはじめ、韓国や東南アジアなどの国々に入国ビザが取得しやすくなりつつあ る。例えば日本政府は、中国の富裕層から中間層にも個人観光者に数次ビザの解禁や個人ビザの発給要件緩和の政策が打ち出された。韓国政府は、中国人観光客のトランジットビザ免除の開始、クルーズ船乗客の出入国審査の簡素化、マルチビザ発給拡大と電子ビザの発給、また飛行機の乗り継ぎを行う場合に限り72時間以内のビザなし滞在を認めることになったことなど、いろいろな優遇・緩和の政策のおかげで、中国人観光者も簡単に海外旅行に行けるようになった。

5.元高円安も追い風

  多くの中国人が日本に旅行する背景には円安・免税対象拡大で割安感をするのも要因の一つとなる。数多くの日常用品、ブランド品など中国で買うより日本で買ったほうが安くて、質が保証できるという言い伝えが広がっている。そして免税待遇を受けられる。さらに日本の多くのお店で国際クレジットカードの使用が可能、いわゆる中国版のデビットカード「銀聯カード」も使えるようになり、中国人観光客にとっては、日本旅行の距離が近いうえに安くて便利さも魅力となることは間違いないと思われる。それだけではなく、最近中国の春秋航空は上海から東京まで片道の運賃が格安で5000円ぐらいしかかからないというような安さで日本に来られる方法もあった。それも一部の観光客に喜ばれる。

6.終わり

  「讀万巻書、行万里路」(万巻の書物を読み、万里の路を行く)という中国の諺があるように、現代の中国人たちは、書物を読むことにより、自らの体験と観察で、時代の発展とともに新しい人生観、価値観を万里の路を行く旅に求めながら実現したいのではないかと思う。このような中国人の旅行に対する思いは、実は古代から現代まで変わりがないと言っても過言ではない。お金がなかった時代には貧乏旅行、今はいろいろあるけれども世代によって考え方については多少違いがあるけれども、旅行する目的及び意義に対して、根本的な考え方と認識においては大差があまりないのではないかと思う。そういう意味では、これからも中国人がきっと今まで以上の意気込みでどんどん外国への旅行に行くはずなので、今の1億人という数が決してゴールではなく、ただスタートラインに立ち始めただけの象徴にすぎないと考えられる。


  参考資料:
  1.人民網日本語版2013年2月19日
  2.国土交通省平成26年度中国市場プロモーション方針
  3.日本政府観光局統計データ2014年7月
  4.駒田井正 「21世紀の観光とアジア・九州」九州大学出版会2001年
  5.朝日新聞2014.12.31
  6.新華網 jp.xinhuanet.com//