第47話  「マクドナルド化」と地元ブランド

斎 藤 敏 子

 

   北陸新幹線開業を富山への集客に結びつけようとする多くの努力がはらわれている。観光白書等では、地域の魅力、地域の個性、地域の文化を強く訴求することによって集客力を増すことが強調されている。これ自体は正論であるが、その具体化はかなり難しいのではないかと考えられている。なぜだろうか。

   一般にチェーンストアのブランドによる全国展開がはかられて久しい。たとえば、スーパーマーケットの棚段管理等は既に大手食品商社の管理下にあることが多い。資本および経営は独立していても、その部分のオペレーションは大手の全国系列によって担われていることは周知の事実であろう。いわゆるフィールド・マーケティングもしくはインストア・マーチャンダイジングと呼ばれる領域である。

   さらに一般化していうならば、「マクドナルド化」の事態が進行しているといえよう。社会のあらゆる局面がチェーンストアのオペレーションに組み込まれる、という状況が深化しているのである。
   たとえば富山県内のホテルにおいてもこのような文脈でとらえられる事態が進行している。しかもここではオペレーションにとどまらず、資本についても全国系列の浸透が確認される。

1.「宇奈月 杉乃井ホテル」のケース

   本ホテルは、もともと宇奈月ニュ-オータニホテルであり、ニューオータニチェーンの傘下にあった。その意味では、以前からチェーンオペレーションの下で運営されていた。新幹線開業を契機として、別の全国ブランドの名称で再出発することとなった。運営会社であるオリックス不動産は、宇奈月ニューオータニホテルを「宇奈月 杉乃井ホテル」と改称する予定である。

   杉乃井ホテルは、別府温泉の大規模リゾートホテルとして有名である。東日本ではニューオータニのほうが知名度の点では高いかもしれないが、西日本での杉乃井ホテルブランドの認知度はかなり高い。これも活かして新たな集客を意図している。杉乃井ホテルは売上高でも上位とされる優良ホテルで、そのサービスには定評がある。これを富山にも導入・定着させたいというところが運営会社の目標であろう。

   「宇奈月 杉乃井ホテル」を杉乃井ホテルの関係ホテルとして、別府でスタンダードとされているサービスその他を導入するのと併せて、そのブランド力により新たな顧客層を開拓しようとしている。新幹線開業を契機としてこれらを一挙に促進できるかもしれない。

宇奈月ニューオータニホテル 筆者撮影

2.「ホテル森の風立山」のケース

   2014年8月に「ホテル森の風立山」が富山市に開業した。運営はホテル東日本で同法人は東日本に5つのホテルを展開している。親会社は住宅メーカーである東日本ハウスである。同社はホテル事業を強化しつつあり、ホテル東日本を通じて新たなホテルの設置をはかっており、「ホテル森の風立山」はその一環と位置付けられる。さらに4月には和風宿泊棟の増設も企図している。
   県外の5ホテルで「富山フェア」による誘客をはかっている。チェーンストアのネットワーク活用の典型例であろう。

3.「マクドナルド化」の拡がり

   このように、チェーンストアのメリットを活かすことは、観光産業においても一般的である。その生産性および効率性の高さを導入することによってパフォーマンスを上げていくことになる。地域の個性の喪失が指摘されて久しいが、その背景には「マクドナルド化」による経済効果の追求がある。これを修正することはなかなか難しい。

   地域経済の活性化にあたって、「マクドナルド化」あるいはチェーンストアの導入は必然であるともいえる。大都市圏でもホテルや飲食店の展開はフランチャイズ等のチェーンストア化によって行われており、地方でその傾向が強化されることは自然な流れであろう。

4.地元志向の動き

   しかし、株式市場では、北陸に基盤を置く企業銘柄がさかんに取引されている。北陸新幹線開業により増加が予想される観光客およびビジネス客の拡大が見込まれるためである。百貨店や外食産業を中心に幅広く買われている。たとえば、百貨店の「大和」の株価は今年に入って40%以上も上昇した。新幹線開通に対応して改装を行っており、土産物等売り上げが伸びると予想されている。
   ドラッグストア「クスリのアオキ」の株価も約20%上昇している。ラーメン店の「ハチバン」もJR富山駅前に新店を計画しており、株価は約10%上昇した。
   これらの投資は短期投資が中心で、その定着は今後の課題である。この機会に地元ブランドの確立が求められる。

   当選した佐賀県知事のキャッチフレーズは、「佐賀のことは佐賀で決める」であった。対立候補は、TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブを市立図書館の指定管理者にしたことで知られていた。まさに「マクドナルド化」をもたらすことによって地域活性化をはかろうとしていたのである。これに対して佐賀県知事は、「佐賀には誇るものがたくさんある。あの図書館。佐賀を東京にしてどうするんですか」と喝破した。
   これは選挙戦で使用されたフレーズなので、過度に強調されているかもしれない。しかしその意味するところは納得できるものであろう。富山には誇るべきものがたくさんあり、これを活かした活性化がとるべき方向であることには、大方の支持が得られるに違いない。


参考文献:
   ジョー ジ・リッツア、正岡寛司監訳(2002)『マクドナルド化する社会』早稲田大学出版部
   観光白書(平成26年度板)国土交通省 観光庁

さいとう としこ 現代社会学部 准教授(観光専攻:観光サービス論、ホテル業論等担当)