第4章 堅実な生活
第1節 生活の枠組みの変化

第3項 新たな行動へ(1)
−−低調なボランティア活動−−

参加者は多いが活動は少ないボランティア
―社会生活基本調査―

 「社会生活基本調査」により、過去1年間にボランティア活動をやったことがある人の率を見ると、富山県では31.5%であり、全国の26.2%に比して高い。
 ただし、この行動者率は、滋賀、福井、石川、長野、岐阜などでも比較的高く、富山は周辺の諸県に比べれば相対的に低く、全国では12番目の位置にある。
 なお、行動者率の特に低いのは、大都市圏の都府県である。


 富山県民の各種ボランティア行動を全国と比較してみると、概して、行動者の率は高いが、それぞれの行動日数は少ない。


 ボランティア活動を構成する各項目の都道府県毎の行動者率の相関係数(R2)を1から控除したものを項目間の距離として、クラスター分析により、指標の相互関係を整理しグループ化を試みると右図のようになる。
 「まちづくり」は、いわゆる町内会活動が太宗を占めている。このため清掃活動を主体とする「自然・環境保守」とごく近縁にある。
 さらに「高齢者支援」とも老人クラブの活動等を通じて近い位置にある。
 他方、子供会や児童スポーツクラブ等の諸活動を通じて「子供支援」と「スポーツ文化等活動」は近縁にある。
 以上の活動に交通安全や防犯活動等を内容とする「安全生活活動」を加えれば、町内会の活動が一通り揃い、明確なグループとなっている。
 以下の諸活動は、それぞれ距離が離れているので、グループについては論じない方がよいであろう。

 このように、本統計でいう「ボランティア活動」とは、ボランタリィな(自発的)活動というより、緩やかな強制的側面もある地域社会の中での諸活動を意味している。


 以上のようなボランティアに関連する富山県民の行動をどう解釈するか。
 ボランティアといっても町内会の清掃、あるいは婦人会こぞっての施設での活動といった性格のものが含まれ、いわば近所付合いとしての活動が多いものと見られる。こうした活動は、見方によっては、半強制的な意味合いを持ち、純粋なボランティアではないといえよう。もちろん、このような行動を即座に否定的に捉える必要はない。
 しかし、富山でのボランティアの行動者率が概して高いに拘わらず、ボランタリィな活動は低調と捉えることが当を得ているのではなかろうか。

 ボランティア活動の日米比較として、「貧しい人を支援すべきという気持ち」は双方にあり、それ以外では、日本で、知り合いへの活動や義務感がきっかけとする者が多く、アメリカで、自分自身の満足を高めようとする者が多いという。
 これになぞらえて言えば、奉仕活動行動者率の都道府県分布は、日本型ボランティアが、大都市圏で大きく減少し、周縁圏では比較的残っているのであろう。
 また、アメリカ型ボランティアが大都市圏を中心に芽生えつつありながら、人口比では未だ限られたものに留まっている。ただし、大都市圏では、人数がまとまり、多様な新しい活動が始められていると考えられる。

 ところで、今後、高齢人口が増加する中で、退職後・子育て後の自由な時間を持った高齢者によるボランタリィな活動にはも関心が持たれるが、どのようになっていくであろうか。

 →2001年統計による分析

(Feb.17,2008Rev./Dec.30,2000Orig.)



 
 

増えるまちづくりNPO
―NPO法人制度10周年―

 NPO法(特定非営利活動促進法)が制定され10年経ち、この間に、全国各地で多様なNPOが設立されてきた。
 2008年末現在、富山県の承認NPO法人数は、241であった。
 人口当たりでは218法人/百万人で、都道府県の中では13番目の少なさとなっている。

 地域毎の人口当たり法人数のパターンについては、相関のある指標が思いつかない。



 NPO法人制度創設の当初、富山県での法人認証数は、極めて少なかった。
 しかし、2000年代初めから着実に増加しており、現在では、人口当たりで石川県に匹敵するまでになっている。この着実な増加の背景として、富山県民のボランタリィな活動に対する意識も次第に変化しつつあることは確かであろう。

 ただし、一般論として、自治体が、地方分権の流れの中で、住民との協働を促すとしてNPO法人の設立を奨励・支援している面もある。富山県では、特定非営利活動法人富山県民ボランティア総合支援センターがこの役割を果たしている。ちなみにこうした経緯で設立されるNPOをGONPO(ゴンポ)と呼ぶそうである。

 北陸3県では異なる様相を示しており、特に、福井と富山が逆方向にある例は、他の統計にはあまり見られないものである。
 ちなみに、高齢者福祉への対応などで類似した違いがあり、福井では、地域社会の課題を社会的に解決していこうとする方向があるのに対して、富山では、各世帯を基礎として解決していこうとする方向が強いと考えられる。近年、富山では、行政に支援を要請する面も現れてきており、この性向は大きく変化していると見られるが、各人が、自発的に貢献していこうとする意識はまだ低いと言えそうである。
 ただし、近年、福井のNPO法人数は相対的には伸び悩みとなっている。


 NPOの活動分野については、1法人が複数の活動分野を掲げる場合も多い。
 分野として、最も多いのは、全国でも富山でも、保健・医療・福祉である。これに次いで多いのは、全国では社会教育及び団体支援であるが、富山では子供の健全育成となっており差異がある。
 活動分野別の人口当たり法人数については、富山では、いずれの分野でも全国平均より少ないが、比較的全国平均に近いのは、子供の健全育成、保健・医療・福祉、であり、逆に低いのは科学技術振興、国際協力、人権擁護・平和推進となっている。

 偏見を持った見方の虞があるが、総じて、旧来からあった事業で行政を補完し共生していく活動分野で多く、新しい事業で行政と対峙し拮抗していく分野で少い傾向があると言えそうである。

 なお、保健・医療・福祉等の分野では、非営利ではあるが、いわゆるコミュニティ・ビジネスと関連してくる活動もある。このため、NPOについては、雇用の場といった観点などからも注視しておく必要がある。

 ちなみに、NPO法人の承認は都道府県及び内閣府が行っており、県の状況を全国平均と比較する際には、比較の趣旨によっては、都道府県承認分の合計を用いるべきことに留意が必要である。


 事業目的別の法人数の推移では、制度ができた当初は保健・医療・福祉、子供の健全育成のNPOが設立され、その後も着実に増加している。
 2000年代に入って、多様な目的のNPOが生まれ、それぞれ着実に増加している。


 近年2年間の事業目的別での延べ法人数の増加寄与度を見ると、まちづくりNPOの増加が目立つ。


(統計データ)

 NPOの活動には多様なものが含まれる。しかし、今日NPOへの関心が高まり、法律の制定までに至っているのは、現在の市場資本主義の制度のみでは、達成できない地域社会に必要な機能を充足しようとする動きが高まっているためとされる。
 町内会等の従来からの地域社会組織が活動しておれば、新たな組織の必要性に乏しいかどうか。確かに活動の一面にはそうした部分もあろう。しかし、町内会等の地理的範囲を超えている課題も多く、新たな地域社会組織も求められていることは間違いない。
 このようなことから、ボランタリィな活動を展開する市民意識が概して低い富山県には、大きな課題があると言えよう。手短な議論は難しいが、魅力ある地域の作りのための重要な基盤が欠けているように思われる。
 ただし、次第に意識が高まってきていると見られることも十分認識しておく必要があろう。




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(Jan.31,2009Rev./Dec.30,2000.Orig.)