第4章 堅実な生活
第5節 学び続ける暮らし
第1項 歪む教育機能(1) −−学校改革の課題−−
1980年代、1990年代に長期欠席児童・生徒が急増し問題視された。近年は、高い水準での横ばいが続いており、課題が解決されているわけではない。このため、地域住民の学校運営参加など多様な模索がなされている。
なお、長期欠席児童・生徒の統計は、かつては50日以上欠席が基準とされていたが、現在は30日以上を基準としていることに留意が必要である。
北陸はやや沈殿型(?) ─児童生徒の問題行動等に関する調査─
文部科学省の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査(2009年度)」によれば、富山県での問題の発生率は、「いじめ」については、全国平均よりやや多めであるが、その他の項目については、概ね平均ないしはそれ以下となっている。
暴力行為の発生率は、全国の4.3人/千人に対して、富山県では3.8人/千人で、若干低いが、都道府県の中では、 昇順で29番目で若干多い位置にある(2008年度の率は、全国平均を上回っていた)。
ちなみに近畿の府県では、暴力行為の発生率が特に多い。
いじめの発生率については、全国の5.1人/千人に対して、富山県は6.3人/千人で上回っており、都道府県の中での順位でも昇順で36番(降順で12番)であり、多めの県となっている。
ちなみに東海北陸の県では、いじめの発生率が高くなっている。
明確な区分でないが、全国の都道府県では、いじめが特に多い地域と暴力行為が特に多い地域は異なっている。この前者はストレスが沈殿する地域、後者はストレスが暴発する地域と言えるかもしれない。
北陸3県については、どちらかと言えば、いじめの多い沈殿する県になっているといえよう(ただし。富山県はそれほど際立っていない)。
小学校児童の不登校の発生率については、全国と富山県ともに3.2人/千人となっている。
中学校生徒の不登校の発生率については、全国の27.7人/千人に対して、富山県は22.6人/千人と低く、都道府県の中では、5番目に少ない。
ちなみに小学校児童と中学校生徒の都道府県毎の不登校発生率にはやや相関がある。
高校生徒の不登校の発生率については、全国の15.5人/千人に対して、富山県は15.4人/千人でほぼ同じくなっている。
高校生徒の中途退学の発生率については、全国の1.7人/千人に対して、富山県は1.5人/千人と若干少なくなっている。
全国で中途退学の発生率の高いのは、大都市圏、地方中枢都市所在の都道府県と中四国九州の都府県である。
全国の都道府県毎の高校生徒の不登校の発生率と中途退学の発生率には、当然のことであろうが、若干の相関がみられる。
(統計データ)
(Sep.17,2010)
(統計データ)
(Sep.17,2010)
長期欠席児童・生徒の推移 ―高い水準での横ばいが続く―
小学校児童
富山県の小学校での長期欠席児童の増加は、概ね1990年代半ば過ぎに収まり、その後横ばいが続いている。
なお、欠席事由別では、病気の長期的な減少が見られるが、この事由区分は相当曖昧な面を持つものと推測される。
| 小学校校長期欠席者 2004年 |
| 児童 総数 | 長期 欠席 者数 | うち 病気 欠席 | うち 不登 校 |
全 国 | 児童数 人 | 7,200,933 | 62,146 | 29,086 | 24,077 |
| 構成比% | 100.00 | 0.86 | 0.40 | 0.33 |
富 山 県 | 児童数 人 | 60,990 | 427 | 119 | 188 |
| 構成比% | 100.00 | 0.70 | 0.20 | 0.31 |
都道府県 順位 番 | - | 37 | 44 | 27 |
全国との比較では、不登校が全国平均に近いが、病気が少なく、都道府県の中で長期欠席児童(合計)の比較的少ない県となっている。
これまでの経年的変化については、富山県では全国に比して早めに増加が収まり横ばいに入った。しかし、近年全国では少し始めているのに対して、富山県では横ばいを続けている。ちなみに全国では病気の減少が大きい。
都道府県毎の小学校長期欠席児童比率については、東北、北陸及び沖縄を除く南九州などで特に低い。こうした中では富山県はやや高めの位置となる。
これに対して、近畿から中国地方にかけての府県、関東周辺の一部の都県などで高い。
中学校生徒
他方、富山県の中学校での長期欠席生徒の増加は、2000年に収まり、21世紀に入って後横ばいが続いている。
このうち、病気については、小学生と同様に、長期的な減少が見られる。
| 中学校長期欠席者 2004年 |
| 生徒 総数 | 長期 欠席 者数 | うち 病気 欠席 | うち 不登 校 |
全 国 | 生徒数 人 | 3,663,513 | 131,181 | 19,737 | 102,149 |
| 構成比% | 100.00 | 3.58 | 0.54 | 2.79 |
富 山 県 | 生徒数 人 | 30,835 | 922 | 57 | 805 |
| 構成比% | 100.00 | 2.99 | 0.18 | 2.61 |
都道府県 順位 番 | - | 36 | 46 | 29 |
全国との比較では、水準は異なるが小学校児童と同様に、不登校が全国平均に近く、病気は少なく、合計で都道府県の中で比較的少ない県となっている。
これまでの経年的変化については、富山県は全国に比して早めに増加が収まり横ばいに入っている。
全国都道府県毎の中学校長期欠席生徒比率については、東北、北陸及び除く南九州などで特に低く、近畿から中国地方にかけての府県、関東周辺の一部の都県などで高いといった小学校児童と似たパターンとなっている。
ちなみに、各都道府県の小学校児童と中学校生徒の長期欠席比率の相関(R2)を見ると0.675で高いものとなっており、双方に共通した要因があるものと推測される。
(Jan.21,2006.Rev.)
急増した富山県内の児童生徒の暴力行為 ─5年間で4倍強─
2008年度の富山県内での児童生徒による暴力行為の発生件数は、4.3件/千人であった(文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」2008年度)。
これは、全国の4.2件/人を若干上回っており、都道府県の中では、16番目の大きさとなっている。
安全性の高いことを標榜するする地域としては そして、特に今後の地域を担っていく若い人たちの行為として、蔑にできない問題である。
この人口当たり発生件数は、地域によって大きな差があり、関西から中国地方及び四国、さらに東京の周辺県で特に高い。
東北から北陸へと続く日本海沿岸地域で低いことを期待したいところだが、富山は、新潟と並んで全国中位にある。
暴力の内容については、件数としては、生徒間暴力が最も多い。ただし、これは、児童生徒当数当たりで、ほぼ全国平均に相当している。
相対的には器物破損が多く、児童生徒当数当たりでは、全国平均の約1.3倍である。
他方、教師・その他の人への暴力は少ない。これは、強い者とは争わないという意味であろうか。
今般の調査結果の発表に際して、特に、暴力行為の急増が指摘された。
実は、富山では、特に2007年に跳ね上がり、2008年度もさらに若干増加している。この結果、かつて全国平均の半分以下にとどまっていたものが2007年度から全国平均を超えている。
(グラフのみ更新 Sep.17,2010)
ちなみに、最近5年間では、富山県で4.3倍となっており、全国で2番目の大きさとなっている。
児童・生徒の暴力行為については、近年の子供たちは、社会生活の体験に乏しく、困難な事態に面して暴発してしまうと説明される。
しかし、我々は、子育て、特に社会性の涵養を専ら学校に委ねており、地域社会で育てる視点を持ち合わせなくなっているように思われる。
地域社会の在り方について、我々の働き方(勤労生活)を含めて、真摯に再考すべき課題があるようた。
(統計データ)
(Dec.02,2009)
極めて低い学校運営への住民参加 ―評議員等設置学校比率―
学校の様々な問題発生を契機に、地域が学校運営に参画していく仕掛けが形成されてきている。
学校運営に当たり,教育目標・計画や地域との連携などについて保護者や地域住民の意見を聞く学校評議員制度が2000年4月から導入されている。さらには保護者や地域住民が一定の権限と責任を持って運営に直接参画する学校運営協議会の設置(コミュニティ・スクール制度)が2004年9月から可能となっている。
しかし、富山県では、極めて低調なものに留まっているようである。
学校運営協議会によるコミュニティスクールはまだ1校も成り立っていないし、評議委員会の設置率も低い。
評議員を設置している小学校の比率は、全国の91.1%に対して、富山県では81.2%と低い。これは都道府県の中では、6番目の低さとなっている。
評議員の設置は、地域住民の活動の意向とともに、地域の教育委員会の姿勢も関係している。富山県にあっては、地域住民のボランタリィな活動は低調で、教育委員会の活動を開放し活性化していこうとする姿勢も低調なのではなかろうか。
中学校の評議員設置比率についても、全国の91.6%に対し、富山県は89.2%で若干低い。都道府県の中では15番目の低さとなっている。
小学校と中学校の評議員設置率には当然相関が予想される。
設置率が特に低いのは、一般に従来の地縁活動が残っている地域で、新たなコミュニティ活動については低調な地域と言えそうであり、富山はこのグループに近い位置にいる。
換言すれば、物事を御上に任せがちな地域である。
(統計データ)
(Feb.18,2011)
(以下は2005年度データです。)
評議員あるいは類似した委員等を設置している学校の比率については、全国では78.4%であるが、富山では48.3%であり、全国では、島根に次いで低い。
さらに、ほぼ100%の設置となっている都道府県立及び政令指定都市立の学校を除きその他の市町村立の学校のみについて見ると、全国の75.3%に対して、富山では39.3%と一層低く、やはり全国で2番目に低い。
評議員等設置学校比率が富山でなぜこのように低いのか。
一般には、学校統合その他山積する多様な課題への円滑な対処において、外部の影響を受けたくないという発想があることが想像される。しかし、これは富山で特に低い理由かどうかは判然としない。
ボランタリィな活動の低調さが、住民の行動を促さないとも考えられるが、都道府県の統計で見る限り、人口当たりNPO数などとの相関関係は見出し難い。
いずれにしろ、県民の意向と行政(教育委員会)の姿勢が重なって、「お上任せ」が維持されようとしているのだろう。
制度設定後の設置校比率の推移を見ると、2004年以降急速に増加し始めているが、これは文部科学省あるいは県教育委員会等の督促で急速に上がっているものと推測される。運営の実態がどのように進んでいるかが重要なことはいうまでもないが、情報を持ち合わせていない。
こうした状況をどのように評価するか。時代の趨勢の中で否定的に言うことは簡単だが、県民が地域づくりに主体的にどうかかわっていくかという問題でもあり、幅広く検討されていく必要がある。
図のみデータ更新。なお、文部科学省のホームページでは2007年以降の評議員等設置校の統計の掲載が見つからない。
(統計データ)
(Jan.21,2006.Add.)
遅れる学校運営への地域参加 ―皆無のコミュニティスクール―
2004年に始まったコミュニティスクール制度(地域住民が参加した学校運営協議会で、人事まで含め、学校運営を協議していく制度)を取り入れた学校は、2011年4月現在で、全国で834校となっている。
特定の市域などでまとまって制度導入が行われている傾向があるが、主に大都市圏での導入が進んでいる。
こうした中で、未だ1校も導入していない地域は、15道府県であるが、この中に富山県が含まれている。
富山県は、国が制定する多くの制度をいち早く導入する傾向があるように思えるが、コミュニティースクールについては、学校評議員制度と同様、積極的には導入しようとしていない。
これは、金銭的支援が伴う制度ではないこと、現在の学校関係者にとっては面倒な追加的業務となることと同時に他者から注文を付けられる事態となることなどが要因となっていよう。
さらに、地域の人たちが、子ども達の教育を担う学校運営に参加しようとしていない、その必要性を感じていないことが、基本的な背景としてあろう。
富山は地域のつながりが強いとされるが、NPOの動きなどにもみられるように、新たな形での地域活動(ボランタリィ・アソシェーション)の形成には、相対的に疎いようである(NPOについては、近年いろいろな動きがあることは言うまでもない)。
(統計データ)
(Feb.27,2012)
疎い学校運営への地域参加 ―始まらないコミュニティスクールへの取組み―
| 幼稚園 | 17園 |
| 小学校 | 243校 |
| 中学校 | 76校 |
| 高等学校 | 3校 |
| 特別支援学校 | 4校 |
| 合計 | 343校 |
「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正(2004年)によって制度化された、コミュニティスクールは、2008年4月現在、全国で343校となっている。
70%が小学校だが、中学校や幼稚園などでも導入されている。
343校の内訳を見ると、実際には、京都市、岡山市、出雲市、世田谷区、杉並区、三鷹市などで数多くの学校が導入しており、全国的に広がっているわけではない。
しかし、1校以上の導入が見られる都道府県は既に28都府県となっている。
富山を含め北陸3県にはまだ事例がない。
(統計データ)
学校は、学齢期の子供達が、今後の生活に必要な基礎的な知識を身に付けるための組織である。同時に、子供達は、生活の大部分の時間をそこで過ごし、社会生活の知恵も身に付けていくこととなる。
このような重要な機能を持つ組織の運営を学校関係者のみに任せてよいのか。子供達の両親や地域社会に住む人々もなんらかの形で参画していく必要があるのではなかろうか。「不登校」や「いじめ」の問題によって、このような議論が高まった。
我々は、生活の多くの分野で、かつて家族・地域社会が持っていた機能を外部の政府や企業などの組織に依存するようになってきている。
このような機能の外生化は、社会の近代化の中での家族・地域社会の変化として捉えられている。
しかし、外生化して放り投げながら、外部が提供するサービス、そのための金銭的負担の増加について不満を述べ続けていることが多い。
我々は、これまで家族・地域社会が持っていた機能を単に外部に投げ出したままにしていいのだろうか。
各自なりに、関連する組織に、ボランタリィに参画する必要があるのではなかろうか。
少なくとも、不平を言うのであれば社会参画から逃れられないのではなかろうか。
ちなみに裁判員制度は、かつての地域社会にあった機能をもう一度各自が担うようにする強制的な措置と捉えられよう。
かといって、個々人に、参画する準備があるのだろうか。小生もこのような発信をするだけで、体を動かしている訳ではない。
これに対処するためには、必要な活動の時間を平日の夜間や休日に設定するなど参加し易い工夫をして、ボランタリーな参加の輪を広げていくことが必要であろう。
NPO法人が制度化された当初の立ち上がりのように、富山県では、このようなボランタリィーな社会参画には、疎い面があるようだ。
コミュニティ・スクールについても、NPOの設立の場合と同様に、もう少し各県に普及すると行政が旗を振って導入を促すこととなるのだろうか。
学校運営協議会制度(コミュニティ・スクール)
保護者や地域住民の様々な意見が的確に反映され、地域に開かれ、信頼される学校づくりを進めていくため、これまで、学校評議員制度の導入や、自己点検・自己評価の取組が図られてきた。
学校運営協議会制度は、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正(2004年6月)により、保護者や地域住民が一定の権限と責任を持って学校運営に参画できるようにしたもの。
学校運営に、学校・家庭・地域社会が一体となって取り組み、より良い教育の実現、地域の創意工夫を活かした学校づくりが期待される。
「地域運営学校」、「コミュニティ・スクール」等と呼ばれる。
学校運営協議会の主な権限
@教育課程の編成などについて、校長が作成する基本的な方針の承認を行う。
A学校運営について、教育委員会又は校長に対して、意見を述べる。
B教職員の採用その他の任用にについて、任命権者に対して直接意見を述べる。
参考図書:金子郁容著『コミュニティ・スクール構想』岩波書店2000
→給食費
(Sept.18,2008Add.)
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節目次
表紙
(Sept.18,2008.Rev./Dec.23,2001.Orig.)
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