第4章 堅実な生活
第3節 安心した暮らし
第1項 自立した暮らし
増加し続ける生活保護 ─全国ではかつての安定水準を突破─
2010年度統計がまとめられたので以下の統計のみを更新しておく。
生活保護率の著しい上昇が続いており、富山でも3パーミリを超えた。
(Mar.08,2012Add.)
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生活保護率の統計は、行政施策展開上の月々の業務報告によるものであり、頻繁に発表・報道されている。
しかし、年間の統計をまとめ使いやすい形で、提供されるのは、若干遅れている。
リーマン・ショック後の経済的混乱の中で、2009年度に生活保護率が急上昇したという情報もことさら新たなものではない。しかし、2009年の水準は、かつての安定した水準を超えるものとなっていることは留意しておく必要があろう。
富山でも全国最低ではあるが、1999年を下限としてその後上昇を続けている。
全国の生活保護受給者数は、概ね1985年まで横這いで推移してきた後、バブル経済の中で減少していた。しかし、バブル崩壊とともに横這いとなり、1990年代半ばを底に再び増加し始めている。
これは、企業がその構造改革における雇用削減の一環として、解雇を厭わなくなった時期と重なっている。
ちなみに、破産事件の数も、近年急速に増加している。
実際に生活保護を受けているのは、高齢者世帯、母子世帯、傷病者世帯であり、企業から解雇された者が太宗を占めないとしても、労働市場の限界的な部分から弾き出されていると考えられよう。
ちなみに、各都道府県における生活保護受給者数が底を打った時期は、まず1992年が東京、神奈川、大阪、香川、'93年が群馬を除く関東、静岡、'94年が群馬及び石川となっており、関東を中心とした大都市圏及び地方中枢都市所在県で早くなっている。
これに続いて、'95-'97年には、東北・北海道、中国・四国・九州で底を打ったが、やや東北が早めとなっている。
一方、転換時期の遅い方として、'98年が底となったのは、鳥取、徳島、福岡であった。
さらに、'99年に、最後に底を打ったのが富山であった。
(統計データ)
(Feb.28,2011)
また、生活保護の内容については、いずれの種別の扶助についても増勢を見せている。
なお、世帯の所得格差は次第に拡大しており、また犯罪率、自殺率も増加を見せており、生活保護率の増大と併せて、各種の社会病理現象が拡大している。
さらに、経年変化は必ずしも明らかでないが、野宿生活者も見られるようになっている。(Sep.19,2004.Add.)
生活保護需給者数の増加の大きな要因として、経済のグローバル化の中で、賃金水準が国際的に平準化していく力が働き、「ワーキングプア」の増加が避けられないことがあげられる。具体的には、世界全体の中での競争に打ち勝つためには、国内的には優秀な経営者・技術者陣の所得の上離れ、マニュアル労働者の所得の底抜けが起きることが当然である。このため、現在起こっている所得格差の拡大は、単に景気回復によって解決される問題とは考えられない。
産業活動にあっては、最低賃金水準の再検討、社会保障負担を含めての同一労働同一賃金の原則の徹底が求められ、一方で、一定水準の所得の再配分政策の展開が必要である。さらには、日本経済をどのような位置に置くか包括的な再検討が必要である。
著しく低い富山の生活保護率
一方、富山では、人口当たりの生活保護受給者数が極めて低く、2004年で生活保護率は全国最低の2.2‰となっている。これは、次に低い福井の2.6‰からも乖離している。
全国の中では、中部地方で特に低く、関東(東京・神奈川を除く)がこれに次いでいる。
逆に、受給率の高いのは、大阪・京都、北海道及び四国・九州の諸府県である。
ちなみに、最も高い北海道の受給率は22.9‰であり、富山の10倍以上となっている。
生活保護の扶助の種類別で見ると、受給者数の多い扶助の内では、住宅扶助が相対的に少なく、医療扶助が相対的に多くなっていることが特徴である。
介護扶助については、相対的には多いとしても、実際の件数は、少ない。
富山で受給率が特に低い要因については、まず、就業機会が相対的に多く、多くの人が働いていることによって、豊かであることがあげられよう。また、世帯の規模が大きく、家族がしっかりと支えあっていることも重要な要因であろう(→回帰分析による考察)。
一方、社会移動の少ない狭い地域社会で、周囲の目を強く気にする性向があるかもしれない。あるいは、老人ホームへの措置など生活保護に至る以前の施策が補っていることも考えられる。さらには、ケースワーカーが受給の是非を厳しく判断している可能性があるかもしれない。
家族地域社会に関する富山県民の意識が大きく変化したという調査があるが、今後、生活保護に関する姿勢はどのように変化していくのであろうか。周囲の目を気にすることがなくなれば、老人ホーム入所者数が最低水準から 全国水準に急速に推移したように、急速に拡大する可能性も否定できない。
現状を既に危機とは言わないまでも、一つの転換点にあることは間違いないであろう。
いずれにしろ、家族を形成し、次代を支える人を育てるとともに、場合によっては自らの家族の中でも支え合うという、各個人の生涯設計の中で自立した生き方を指向することは、積極的に評価されるべきことであろう。
個人に擁護等の役割を負わせて行政が手を抜くといった批判の前に、自立するシステムを自ら形成していくことは、社会にとって欠かせない要素である。これがないと、今日のように次代を支える人を育てることが放棄されがちとなる。これには例えば、独身税(より厳密には、子育て回避税でありDINKSにも課税)による公平化という手段が必要なのかもしれない。
富山なりの家族のあり方をしっかり考え、例えば、介護保険を補完し高齢者の在宅生活を促すなど、家族の自立を促す制度を充実していくことが必要ではなかろうか。
仮に「在宅介護充実指向」に家族の支えを求める発想が入るのであれば、「規制緩和指向」の考え方と矛盾する内容を孕んでいる。具体的には、前者はコミュニタリアンに同調する発想であり、後者はリバタリアンに同調する発想と考えられる。このことについて、一貫性を持った議論がなされているのであろうか。
行政にあっては、とにかく財政負担の軽減が先にあって、思想的一貫性など無視されているのではなかろうか。(Aug.30,2007.Add.)
(統計データ)
社会環境が支える富山県の低い生活保護率 ─窓口対応懸念への反証─
我が国の生活保護率は、バブル経済崩壊後の雇用の不安定化の中で、1990年代後半以降、次第に上昇してきている。
こうした中で、富山県でも、上昇傾向がみられるが、その率自体は、全国で最も低い水準で推移してきている。
都道府県毎の生活保護率には大きな差があり、大阪府や北海道と富山県や福井県などとは、10倍程度の開きがある。
厳しい経済動向の中でも相対的には景気後退が軽微な本州中央部で保護率は低い。
また、家族規模の縮小が進んでいる大都市地域で保護率は高くなっている。
各都道府県の生活保護率について、それぞれの失業率と平均世帯規模で回帰式を求めると、決定係数約80%の説明力を持つ。
富山県の生活保護率の低さについて、「申請受付を渋る傾向が強い」ためという主張があるが、このようなことを事実として実証することは容易ではない。例え幾つかの事例を挙げれることができるとしても、それが地域の全体像かどうか判然としないし、さらに他地域と比較して実証するには統計的検証が必要となる。
このことについては、一時、Wiki-Pediaで議論が燃えていたが、ここでの主張は、伝聞で事例を挙げるのみで、「生活保護率の低いのは申請受付を渋る傾向が強いためで、その事例が実際にあるという」論理展開であった。これは仮設を構築しているのみであって、実証している訳ではないことに気付く必要がある。
富山の生活保護率の低さは、所得を確保する経済状況、互いに支えあう家族関係からかなり説明ができ、ここから予測される水準からの乖離はかなり小さい。この事実が「申請受付を渋る傾向が強く」ないことを説明している訳ではないが、少なくとも生活保護率が低いことの強い要因として「申請受付を渋る傾向が強い」と主張することは差し控える必要があろう。
(統計データ)
(Jan.01,2010)
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