第3項 景気動向
はかばかしくない景気の回復 ―2010年末までの景気情勢―
グラフのみ2011年末までに入れ替え(Jan.28,2012)
【総括】
2000年代の長期間続いた緩やかな生産拡大も雇用・消費の拡大に十分には繋がらず、2007年後半からは再び生産が減少気味に推移した。さらに、2008年末にはアメリカの金融崩壊に端を発した世界不況から、富山県の経済動向も全面的な厳しい後退局面に入った。
その後、2009年に入って、下げ止まりから回復への兆しが見え、一旦は回復局面に入りつつあると見られるようになった。しかし、2010年春ごろからの回復は、立ち止まり気味で、先行き不透明な状況が続いている。
以下では、関連統計指標の最近の変動を考察する。
生産
鉱工業生産指数は、リーマン・ショック(リーマン・ブラザーズが破綻したことによって引き起こされた世界的な金融危機)によって2008年秋以降、急速に低下した。これが2009年半ばでようやく下げ止まり、以降、緩やかに回復しつった。しかし、2010年春先からは、以前の90%前後の水準で一進一退で推移している。
在庫指数についても現在は85%前後で変動している。
→業種別統計による考察(Nov.23,2004.)
→景気動向の連関構造(May.03,2010.)
なお、近年の景気動向は、アジア、中でも中国の動向と大きく関連してきており、中国からの輸入拡大が、一旦は、日本経済の落ち込みを大きくしたが、逆に2002年からの景気回復も中国への輸出拡大に負うところが大きいとされていた。さらに、バブル的要因が景気浮揚力をもたらしているとの説もあった。
2007年末から2008年秋に至る動きは、国内の消費の低迷、中国への輸出拡大の一段落など背景にありそうだ。
さらに、2008年秋以降については、アメリカ、中国への輸出の頭打ちが大きく影響している。
大口電力使用量(製造業)は、リーマン・ショックによる景気の急後退の中で、需要が急速に落ち込んだが、2009年に入って下げ止まりから回復へと向かったが2009年年央以降は横ばいで推移した。その後2010年に入って一段階増加し、ようやく以前の水準に戻ったようにみられる。
貸出残高については、2004年年央から一旦下げ止まりの様相があり、2005年年央に一段低下の動きがあったものの、2006年初からは横ばいが続いている。
今回の景気後退の中では、いったん増加を見せたが、基本的には横ばいないしは減少基調で推移している。
他方、所定外労働時間指数は、2008年には年初より大きく低下し、さらに秋以降は急速な低下となった。2009年に入って若干の回復がっあったものの、その後は以前より低い水準で横ばい状態で推移している。
分配
有効求人倍率の水準は、2006年中は、1.3前後で横ばいであったが、2007年に入って低下が始まった。2008年5月には、1を割るに至り、さらに、2009年1月には、全国値を下回わり(Mar.02,2009Add.)、3月には、0.47倍で、近年なかった42年振りの低い水準までに落ち込んでいる。その後、下げ止まりから、2009年末には、若干の持ち直しへと向かい、緩やかな回復基調が続いている。
また、雇用保険受給者も、季節性があるが、リーマン・ショック以降、急速に上昇した後、2009年後半からは低下し続けている。
常用雇用指数については、2008年前半に増加が見られたが、リーマン・ショックにより全産業では一旦大きく落ち込みその後回復が見られた後、2009年末以降は低下気味の推移であったが、2010年半ば以降は上昇気味となっている。これに対して製造業では、漸減基調が続いており、厳しいコスト削減指向がうかがわれる。
派遣法の改正(製造業の現場にも派遣受け入れを許容)の影響はも明らかには分からない。なお、統計上、派遣受入れは常用雇用に含まれる場合もある。
可処分所得の推移については、季節性が強く、判断し難いが、2009年年央以降の動きは、若干の回復基調とも見られる。
支出
個人消費支出は、2008年後半以降の減少が顕著であり、以降、横ばいが続いている。これは雇用不安の中で、個々の世帯の生活が守りの体勢に入っていることを示しているのであろう。
消費者物価指数は、2008年年央以降急速な低下を見せており、2009年半ばに一旦は回復の動きが見られたが、その後再び落ち込み、2010年は横ばいないしは緩やかな回復で推移している。
→参考
住宅着工は、長期的には、需要減少から漸減していくと見られるのだが、制度改変による2007年の減少に対して、2008年の反動増が期待されていた。しかし、景気の急速な後退の中で、全体としては、横ばい水準にとどまり、さらに2009年には、減少気味ないしは横這いで推移している。
ただし、減税政策があり、その効果のほどは明確でなく、今後反動減の可能性も否定できない。
乗用車登録は、季節性があり判断し難いが、2008年後半には、前年比で見て急減した。
しかし、環境政策と重ねた税制等により、2009年度に急速な回復を見せた。しかし、2010年末には、再び減少しており、今後の動向は定かではない。
(統計データExcel)
(Last_Revised;Jan.07,2011.)
在庫循環
景気動向を捉える代表的指標としての鉱工業生産指数・在庫指数について、かつては、前年同期比の経緯をたどると在庫循環の様相が明確に捉えられた。その後、2003年半ばより、構造的な変化の中で、明確な在庫循環の動き(右図でグラフが左回りに回転する動き)は、捉え難くなっていた。
しかし、リーマンショック2008年9月以降の生産の落ち込みから、在庫の漸減、そして生産の反動増の過程、さらに在庫の積み増しで、かつての在庫循環の様相が再びみられ始めた。
ところが、2011年の震災によって、これまでの薄い在庫からそれなりの在庫へと積み増しが起こっているようである。
(Rev.Jan.30,2012)
昨今の景気動向については、、景気循環の中での位置付けを捉えようとすると、従来の感覚では矛盾する統計指標がいろいろとある。現在の景気動向については、循環的変動ばかりでなく、経済構造の変動として捉える視点が必要と見られる。
また、生きた経済活動として時々刻々の変動を追うべきだが、まず統計によつては季節性の変動があることに留意が必要である。さらに、が富山県程度の範囲の統計では不規則変動も多く、四半期程度の変動で捉えていかないと誤解も多くなりそうである。
変容する景気循環
―鉱工業生産指数の変化―
1.景気変動としての在庫循環
これまで、我が国、そして富山県の短期的な景気変動については、3〜4年を周期とする在庫循環を捉えてきた。そして、これを把握する主要な統計指標として、鉱工業生産指数を注視してきた。
実際に、鉱工業生産指数の生産指数及び在庫指数の四半期値について前年同期比を見ると、生産の拡大、在庫の拡大、生産の縮小、在庫の縮小といった過程が明確に現れ、それぞれを横軸と縦軸にとって図示すれば、環状に回転する図ができた。
富山県の統計でも、不規則変動が大きく歪な環ではあるが、同様の図が描けた。
2.在庫循環の基調の変動
しかし、全国でも富山でも、2003年半ばからこうした環状の変化は見られなくなっており、不規則な変動を続けている。
実は、1997年年初にも不規則な変動があったが、この際には環状の変化の中心点が生産・在庫ともに負の領域に移行する変化を見せた。
今回の2003年半ば以降の変化についても、新しい構造への移行期かとも考えられ注視してきたが、既に3年経過しており、在庫循環を繰り返すメカニズム自体が変化したと捉える必要があるようだ。
3.在庫循環の終焉の要因
景気動向の中で在庫循環が見えなくなってきたことについては、幾つかの要因が挙げられる。
情報化
まず、在庫循環の原因自体について考えれば、生産と在庫の齟齬は不十分な情報に基づくものであり、情報システムの導入によって、こうした変動は緩和していくことが想定される。
SCM(サプライチェーンマネジメント)の導入などは、正しくこのためのものであろう。
ただし、実際にマクロ的な動向にどの程度の影響を与えてきたかは定かではない。
グローバル経済化
経済活動のグローバル化は、情報システムの導入にも大きく支えられて進んできたものであるが、国内的な在庫循環を緩和させる大きな要因である。
グローバル経済の下では、生産・在庫の齟齬は、世界市場の中で調整していくことができる。
さらに、景気動向は世界全体が同調するようにさえなってきたとも言われている。具体的には、ITデバイス等に関連した極めて短期的な変動、中国の経済発展に伴う設備投資の変動、アメリカの住宅投資の変動などが世界経済の変動の機軸となっているとされる。
富山の鉱工業生産指数の変動でも、電気機械や一般機械、そして石油製品の変動が極めて大きく、循環的な動きを覆ってしまっている。
サービス経済化
他方、いわゆるサービス経済化も景気動向の中での在庫循環の意味を変化させてきた要因であろう。
具体的には、1990年代に入って、産業の業種構成が転換し始め、さらに2000年代以降には、製造業を含む第二次産業の比重が急速に減少している。
4.新たな景気動向のあり方
以上のように景気動向全体の中で在庫循環の比重が小さくなり、ついには殆ど見えなくなっており、経済全体が同調して動かなくなっており、景気動向を限られた指標で語れなくなってきている。
このため、今後の景気動向の理解においては、原点に返り、まず業種毎の動向とその相互関連を理解し、さらに、生産にとどまらす、雇用動向を含めた分配に配慮し、家計を経由した消費を含め、総合的な理解に努めることが改めて求められている。
(統計データ)
(Sep.02,2006.Add.)
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