第5章 モノづくり指向の産業
第5節 21世紀産業の構想から形成へ
第3項 新たな産業群の実現
−−地域としての知識複合体の形成−−
新たな産業群の構想
新たな産業群をどのように構想しようと、それが直接実現していくものではない。新たな産業群の形成は、個々の企業家の努力によって実現していく。
この意味で新たな産業群の構想を描くことは、将来の産業構造を占うことと捉えておく必要があろう。
しかし、その構想によって多少とも企業家の努力が収斂し、より一層の成果が上げられればそれなりの意味があることとなろう。
製造業とその周辺産業
我が国、そして富山県は、これまで製造業を中心として産業を発展させてきた。
しかし、アジアを中心とした発展途上国の成長によって、これまでのように昨日と同じモノを大量に生産していても、高い所得水準は確保できなくなってきている。
この意味で、現在の産業構造の転換は、製造業を核としたこれまでのような産業展開が困難となってきてたことが出発点となっている。
しかし、新たな産業構造が、これまでの地域の蓄積と関係なく、製造業からまったく離れたものとは考えられない。製造業(モノづくり)を核とした幅広い産業の中で、既存の蓄積を生かしてこそ首尾よく新たな産業集積が形成されよう。特に、富山県におていては製造業の比重が高く、自ずとこれを核として新たな産業を模索していくこととなろう。
| 製造業から派生するサービス業 |
| 専門的サービス業 |
| 情報・調査サービス業 |
| 教育サービス業 |
| その他対事業所サービス業 |
| その他 |
知識産業
地域が、経済的に自立し生きていくためには、価値あるモノを生産し、他に提供していく必要がある。
これまでのように工業製品を大量に作って提供するのでなければ、何を提供していくのか。
それは、モノのデザインあるいはモノづくりのデザインを作って他に提供していくことではなかろうか。
これは、知識産業とも言われる分野であり、常に知恵を出し続け、その知恵自身を商品としていくことである。
これを製造業と呼ぶか、対事業所サービス業あるいは専門的サービス業と呼ぶかは、ここで拘泥する必要はない。
| 市場適応型 | 増加需要対応型 |
| 隙間需要対応型 |
| 技術深化型 | 先端技術開発型 |
| 適正技術利用型 |
市場適応産業・技術集約産業
どのような方向に知恵を出すかについては、市場の需要を指向していく方向と、自らの技術の深化を指向していく方向とがあろう。
市場の需要指向については、需要の拡大方向を探ることが基本であるが、他者が供給しない隙間を埋めていく戦略もある。
技術の深化は、先端の新たな技術を開発していくことが注目されている。しかし、既存技術でもその的確な活用が功を奏することもある。むしろ将来展望がし易く、現在の様々な技術革新の中で多様なビジネスチャンスが見えているとさえいえる。
産業コンプレックス
地域において、個々の企業や大学、各種の試験研究機関等が連携して、相乗効果を発揮していくことを念頭に置けば、地域に一定の分野で知的集積が形成され、それを核としてさまざまな産業活動が展開されることが期待される。
富山県の既存の知識集積を基礎とした産業コンプレックスとしては、例えば、住宅関連産業、健康関連産業など多様なものが考えられよう。
→富山に既にある産業クラスタ
新たな産業群の形成
新たな産業の実現は、個々の企業家の努力によって達成される。行政や経済界が何かを指導して進められることではない。行政や経済界に何かを求めようとする発想自体が起業者として健全ではないという見方さえある。
しかし、新たな事業の展開が促され、一層実践し易くなる環境の整備は、地域社会の営みとして大切であろう。
連携すべき各種組織
| 学術研究機関 | 高等教育機関 | 富山大学 富山医科薬科大学 富山県立大学 高岡短期大学 富山高等専門学校 他 |
| 公設試験研究機関 | 工業技術センター 他 |
| 産業支援機関 | 制度組織 | 商工会議所 商工会 中小企業団体中央会 他 |
| 各種財団等 | 総合情報センター 新世紀産業機構 他 |
| 各種機関 | JETRO JICST 他 |
| 民間組織 | 各業界団体 | |
| 各企業 | |
ネットワークの形成
まず、いろいろな知識を持つ者が相互に連携し合える場が大切であろう。
これまで、異業種交流等と称して、様々な出会いの場が工夫されてきている。しかし、あらかじめ組織を作るというよりも、連携が必要な際に、あるいは連携が可能な際に、それが自然に形成されていく仕組みを整備していくことこそ効果的であろう。
新たな産業の契機について、常日頃から議論を重ね、チャンスがある場合には、関心を持つ者が容易に結集する仕掛けが必要であろう。特に、地域で学術研究に携わる者、その他公的機関の活動については、その内容を広く公開し、積極的な活用がなされるようにして置くことも重要であろう。
このようなネットワークの形成としては、既に富山県新世紀産業機構の「プラットホーム」などがあるが、この重要性を認識し、県内の多様な活動者がこぞってここを基点に相互交流を展開していくことが期待される。
ビジネス・エンジェル
新たな事業の立ち上げには、資金も重要である。
特に、可能性が定かでない初期の段階の資金が容易に集まるような仕掛けが求められる。
これはリスクも大きいため、多くの人がビジネス・エンジェルとなり、多少のゲーム感覚を持って少額ずつ出し合い、必要な起業家に提供されるような制度も考えられよう。
起業の気運
さらに、地域で、起業を歓迎し、評価する気運が広がることも大切であろう。
今後の産業像として、知恵のある人にどんどん知恵を出してもらい、その他の多くの人はその周りで支援しあって所得を得ていく姿を描く必要があろう。
起業家育成企業への期待
新たな産業群が形成されていくための上述のような環境が整備されていくために、起業家育成企業とでも言うべき事業組織が期待される。
既に地域には、産業活性化、企業育成のための様々な組織がある。こうした組織が、その機能を十二分に発揮し、地域の新たな産業群の形成に貢献するため、経営採算ベースで上述のような機能を形成していくことが求められよう。
追記
職種から見た産業振興 ―包括的検討のために―
| 職種 | 典型的な業務 | 雇用形態 | 所得 | 典型的事業 |
創造的 業務 | 経営企画、 研究開発 | 起業コア メンバー | 高 | グローバルに 展開する事業 |
熟練 業務 | 各種サービス など | 事業継続 コアメンバー | 中 | 都市型産業 など |
非熟練 業務 | 製造、販売 など | 派遣・ アルバイト | 低 | 工場・大型店 など |
本ページでの産業振興の記述は、多少偏っているかもしれない。包括的な視点から述べるには、以下の視点を加えて再考する必要があるようだ。
現実の職業、事業に明確な境界があり区分されるわけではない。また、一つの事業の中にも異なった職業が並存する。しかし、地域産業の活性化を考える場合の枠組みとして右表のように職種を分けて考えることは有用であろう。
創造的業務を主体とする事業については、それを支援する起業環境を整備していくことが重要であろう。
熟練業務については、多様な企業組織の中で形成されるとともに、都市の中での多様な交流の中から生まれてくることが期待される。このため、多様な機能が集積した都市の形成が重要と考えられる。
非熟練業務を主体とする職場は工場や大型店の立地などでもたらされる。このような事業所の誘致は、まとまった雇用をもたらすものとして重要である。ただし、高い所得水準は期待し難い。
参考;
ロバート・ライシュ『ザ・ワーク・オブ・ネーションズ』(1991年)
グローバル化した世界では、労働者は、農民・公務員などを除き、概ね次の3つの職種に区分される。
@シンボル分析的サービス職種、A対人サービス職種、B単純くりかえし生産作業職種
右上の表の区分とは、Aの内容に違いがある。
(Mar.17,2004.)
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節目次
表紙
(Mar.17,2004.Rev./Jan.13,2002.ReEd./Nov.10,1996,Orig.)