構造改革(リストラ)が求められる米作

経営規模拡大による生産性向上の実態

 市場競争力のある米作の実現のために、経営規模の拡大が進められているが、どの程度生産性が向上しているのか。
 統計は、北陸農政局富山統計情報事務所編集「富山農林水産統計年報」及び北陸農政局「北陸農林水産統計」の2種類のものから引用しており、経営規模区分、利用可能年次が図によって異なっている。

生産費
 米作の生産費(労働費を除く)の構成をみると、経営規模による格差が大きいが、農機具費、薬剤費、肥料費等が特に大きな比重を占めている。

 次に、単位面積当たりの生産費を経営規模別に比較してみる。
 最初に、農機具費については、零細な規模では比較的小さいが、150ha〜規模で最大となり、200ha〜規模では縮小している。これは、まず零細規模では生産の外注等があり少なくなっている面がある。150ha〜規模では農機具を自己所有し経営するためその効率的活用が十分になされず結果として生産コスト高となっている。さらに、200a〜規模では農機具の有効活用が図られ単位コストを引き下げている。500a〜規模でコストが一層低下しているが、これは賃借料等が代替している面があり、200a〜以上の規模では、25000円強/10aの水準で一定しているといえよう。この水準は、概ね150a〜の7割程度である。個々の農家がコンバイン等の農機具を所有して経営する水準に対して、請負等を含めて大規模な経営を戦略的に行えば、農機具によっては何倍もの活用ができるはずであり、総体でも一層の生産性向上が可能な要素を持っているものと考えられる。
 薬剤費・肥料費については、概ね全経営規模を通じて一定である。これは単位面積当たりの投下料が一定であれば当然ともとれる。しかし、大経営規模では購入量が大きく、購入価格切下げを要請する力を持ち得るはずであり、その効果が全くみられないといえよう。
 水利費については、地域毎の状況によるものであるが、大規模経営でコスト低減が確実になされている。


 種苗費については、零細規模では購入が相当程度あり、面積当たりでは相対的に高いものとなっている。また、150a〜規模以上で概ねコスト低減の限界となっている。
 建物費については、経営体毎の状況によるものであるが、〜50a、50〜150a、150a〜の段階になっている。


 その他の経費についても、零細な部分を除き、大規模化によるコストの低減効果はみられない。
 また、その他諸材料については、大規模経営でむしろコストが拡大している。これは、あり合わせのもので間に合わせれなくためであろう。


 以上の要素を合計すると、生産コストは、概ね〜50a、50〜200a、200a〜の3つの段階に区分される。このようなマクロ統計で見る限り、200a〜水準で規模拡大によるコスト低減効果が現れなくなっているが、これは生産方法の構造的改革を必要としているのではなかろうか。


労働時間
 米作のための労働時間の構成についても、経営規模によって大きな格差があるが、管理、直播・田植、刈取脱穀、育苗、耕起整地等が大きな比重を占めている。


 単位面積当たりの労働時間を経営規模別に比較してみる。
 管理については、水稲の生育期を通じて不断に行うべき作業であり、規模が大きいほど時間削減が確実に実現している。
 その他の主要な項目については、50a〜から150a〜の規模までが概ね一定であり、200a〜規模で3割程度の削減がなされている。200a〜規模をさらに細分した統計が手元になく、一層の大規模かの効果については定かでない。
 なお、育苗時間が小規模で小さいのは、購入苗の利用である。


 その他の労働時間についても、概ね主要な労働時間の項目と同じ傾向を持っている。


 総労働時間については、生産費と同様に概ね〜50a、50〜200a、200a〜の3つの段階が見られる。
 さらに、500a〜(平成7年のみの統計)で時間が300a〜規模の1/3に減少しており、この区分では、経営規模の拡大の効果が見られる。
 統計的な分析はできないが、管理以外の作業の労働時間の削減については、経営規模とともに、ほ場の区画規模の拡大により効果が現れるものと考えられ、そのための環境整備が求められよう。


 以上のように、米作の生産性向上には、単なる経営規模の拡大では限界があり、生産の構造自体を変革し、戦略的経営を実践していくことが必要である。
 なお、このための体制整備は、農業経営者自らの仕事である。行政が支援するとしても、やる気のある経営者を前提とし、その意欲を阻害することのないよう、適正な土地利用規制等を含めた環境整備等に努める必要があろう。
 さらに、行政としては、一方で戦略的経営者を積極的に支援しつつ、他方でそれ以外の積極的経営を指向しない営農者に対して、農地保全の面から必要な施策を講じていくこと(適正な土地利用規制の展開と営農の新たな組織化)が求められていよう。

 なお、富山県は水稲単作が主体であり、耕地当たりの農業粗生産額で見た土地生産性は全国の中でも極めて低い位置にある。

(統計データ)


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(Feb.14,1998.)