下げ止まる乗車人員数
─JR旅客輸送状況─

 富山県内JR乗車人員数は、1990年代前半の若干の回復増加を除けば、長期的には漸減を続けている。
 しかし、2007年度以降は、減少が止まり、横ばいとなっている。

 右図は、2006年度と2008年度の各線の乗車人員数の変化を定期と定期外に分けて見たものである。全体では、定期0.7%増、定期外3.2%減で、合計0.5%の減少にとどまっている。
 北陸本線は、定期が若干増加しており、定期外の減少と相殺している。
 城端線、氷見線は、定期・定期外とも減少しているが、定期の減少幅は小さいものにとどまっている。
 高山本線については、双方とも増加しており、特に定期については、2年間で8%の伸びとなっている。


 定期による乗車人員数の趨勢変動の主体は、高校生と考えられ、その減少が一時的に横ばいに変わったために、起きているものであろう。
 ちなみに、1990年代の乗車人員数のピークは、団塊ジュニア世代によって形成されたものであり、今回の横ばいは、その子供世代によるものである。ただし、出生数の変化は、合計特殊出生率の低下傾向のため、長期的減少の中での踊り場にとどまっている。


 2000年度以降の推移では、概ね2005年頃から定期で横ばいとなり、定期外でも減少が緩やかになってきている。


 北陸本線以外では、氷見線の定期の急激な減少が目立つが、2008年度には若干の増加となっている。
 また、高山本線については、2005年度前後から定期・定期外とも漸増傾向となっている。これは、速星駅等の周辺での大規模な住宅地開発によるものであろう。


(統計データ)

(Feb.08,2010)




私鉄・バス旅客も下げ止まり
―通学人口の横這いが支え―

 一方、私鉄各線についても、上述のJRと同様、旅客数が横ばいに転じている。
 私鉄を利用する高校生も多く、いわゆる幻の団塊第三世代が、底支えしていることは明白であろう。
 また、地鉄、万葉線ともに、それなりの営業努力がなされてきていることも大きいであろう。

 この横這い期は、10年程度続くものと考えられるが、それまでに高齢者等によって公共交通が多用される状況に入り込んでいるか否かが、今後の公共交通存続の要点となろう。


 他方、バスの利用も、横這い期に入っている。
 バスについても、2003年度には走行キロ数の減少を反転させるなど多様なバス運行の努力がなされている。


(Feb.18,2011.Add.)


急減し続ける公共交通利用
―下げ止まりの見られない減少―

鉄道旅客の減少
 JRの旅客数の推移のうち、北陸線については、かつて1980年代前半までは横這いで推移し、バブル経済の中で若干の増加があったが、1992年をピークとして急速に減少し続けている。
 城端線、氷見線、富山港線については、バブル経済期の横這いを除いて、長期的に減少を続けている。
 高山線は、かつてほぼ横這いで推移していたが、1990年代は次第に減少している。これは、沿線での住宅地整備などもあり、背景人口の増加が自家用車への切り替えとある程度相殺しているものと考えられる。

図のみデータ追加(Dec.07,2007)


 減少する統計値に下限がある場合には、減少率が一定であれば、一定の期間毎の減少幅は次第に少なくなっていく。解析的には、対数を採れば直線に乗る。
 しかし、最近10年程度のJR旅客人員数の減少については、年々の減少幅が一定に近く、対数でなく元の数自体が直線に乗っているように見られる。(少なくとも、こちらの方の相関係数が高くなる。なお、北陸線については、1992-2002年での値で、R2=0.977となる。)
 さらに、富山港線については、減少が加速しているようにさえ見られる。

 仮に、今後も、年々この速度(減少幅)で減少が進んだ場合、早晩、それぞれの旅客人員数は0となるが、特に、富山港線では2017年、氷見線では2020年と刻限が迫っている。
 このような直線的変化については、旅客の減少に対して、企業経営の上でサービス提供を削減せざるを得なくなり、悪循環を起こしているためと捉えることができよう。
 運行時刻の改訂がある毎に、本数が減ったり、休日運休が始まったりしている。1時間に1本程度では日常生活で便利に使うことが難い。

 なお、第二次団塊の世代が高校生となったのは概ね1980年代の末であり、バブル経済期と重なっている。1980年代後半の旅客人員数減少の踊り場は、この影響を含んでいるかもしれない。このような要因を勘案すれば、幻の第三次団塊の世代により、今後の高校入学者数は10年以上にわたってほぼ横ばいが続くので、旅客人員数の減少も若干緩和される可能性がある。


 一方、私鉄各線についても、利用者の減少は大きい。
 ただし、近年、年々の減少幅が若干少なくなっているようにも見られる。特に、地鉄線及び万葉線については、2002年には前年比増加となっている。
 ちなみに万葉線については、明確な営業努力の結果と見られよう。

 なお、JR各線との違いについては、私鉄各線では高校生等の利用度が相対的に高いことが要因かもしれない。



下げ止まらないバス旅客の減少
―バス運行増強の効果―

 バスの利用についても、急激な減少が続いている。
 特に、概ね2000年までの実績では、輸送総人員数が早晩0となる趨勢であり、鉄道以上に厳しい状況が続いていた。
 バスの運行状況については、これまで、総走行キロ数が年々減少していた。特に、昭和年間は比較的緩やかな減少であったが、平成に入ってからは、補助制度等の変更もあり、急激な減少を見せた。また、運賃も次第に上がってきている。ちょっとした距離で400〜500円もすると気軽な利用をためらうことになる。これらは、利用者の減少で余儀ない変更だとされているが、鉄道と同じように利用者の減少と便の減少が悪循環を起こしていたといえよう。
 こうした趨勢の中で、近年、コミュニティバスなど多様なバス運行が工夫され、2003年度には走行キロ数の減少を反転させている。この結果、利用者の減少に若干の歯止めがかかっているようにも見られる。しかし、総体として(マクロ的に)見る限り、下げ止まるまでには至っていない。

(Feb.25,2006.Rev.)



 公共交通の衰退は、高齢者や年少者など車を運転しない者に対して、生活環境の著しい悪化をもたらしている。さらに車を運転する者に対しても車の利用を強要するという意味で、生活環境の悪化であるといえる。
 公共交通の維持については、今後の県民生活・経済活動から勘案した都市のあり方、環境問題から勘案した自動車利用のあり方、高齢者等の足の確保等々について総合的に勘案して、その必要性を検討するとともに、新たな公共交通網の実現についても、多様な交通需要を全体として制御することを念頭において、県民の合意を形成しつつ、包括的な施策を展開していくことが必要となっている。

 特に富山市においては、富山港線のLRT化が計画されているが、富山港線ばかりでなく、今後の富山市を中心とした交通のあり方をその都市づくりを含め総合的に勘案し、合意を形成し、必要な対策を講じていくことが強く求められている。
 新たな交通網の整備については、賛否両論が入り乱れる議論となるため、富山港線のLRT化が安易に進められ好ましくない結果をもたらした場合、今後の富山市の再生に好ましくないとも危惧される。

(統計データ)

(Sep.05,2004./Feb.16,2003.Rev.)




バス旅客減少の乗用車多用型と過疎型
 全国47都道府県のバス輸送の推移を見ると、特に大きく減少したのは、愛媛・高知・鳥取・香川・山口・山形・富山・群馬・秋田などである。
 このうち乗用車の普及率が高いのは、群馬・富山であり、全体としてバス旅客減少と乗用車の増加との相関は必ずしも強くはない。


 大都市圏で住宅が整備され人口が増えつつある奈良県及び埼玉県では、バス輸送が増加している。また、神奈川県及び千葉県では乗用車の増加が大きいが、バス輸送の減少はそれほど大きくはない。
 一方、山梨県、茨城県、群馬県等は、乗用車の増加によってバス輸送が特に減少した乗用車多用型の地域と見られる。
 これに対して、愛媛県、高知県、香川県、島根県などは乗用車の増加というよりは、居住人口の減少によるもので、過疎型といえよう。
 こうした中で、富山県は、乗用車多用型と過疎型の双方の性格を併せ持っている地域といえよう。
(98.01.04.)

旅客減少の悪循環
 自動車交通が増える一方で、公共交通の利用の便の低下と利用者の減少が、相互に悪循環を起こして進んでおり、ついには公共交通の廃止に行き着くシナリオが見えている。
 高齢化社会での交通弱者の増加、環境制約による自動車利用の抑制要請、さらに基本的には人と人が触れ合う街づくりなどの課題に対応するため、公共交通のあり方を改めていくことが急務であろう。
 社会基盤の整備として道路の整備を公的に進めており、道路の利用者から逐一料金を徴収していない(税で徴収しているという考え方もある)。公共交通も重要な社会基盤であり、公的に賄っても不思議はない。利用者が特定できるからといって料金を厳密に徴収すべきだということには必ずしもならないのではなかろうか。
 また、大所高所から見れば、現在道路の建設維持に使っている費用の一部を公共交通の整備維持に活用するだけで、状況を大きく改善していくことができる。

国土軸と鉄道旅客
 全国の鉄道旅客の減少を見ると、15年間に10%以上減少した県は、京都府・兵庫県を除く本州の日本海沿岸の全県及び、和歌山県から四国4県・南九州2県と繋がる県の2つの帯(軸)となっている。
 一方、東北の太平洋沿岸から東海・山陽・九州と繋がる都府県のほとんどでは増加しており、減少したのは、岩手県・三重県・大分県に限られ、それも10%減以内である。
 太平洋〜瀬戸内の一帯(軸)が成長し、その他地域が衰退する分布は、いわゆる既存の中核的な国土軸とその他地域との地域格差が拡大してきていることを明らかにしているものであろう。
 このような問題については、新幹線建設の議論で様々になされてきているところであるが、的確な対応がなされない限り、地域の地盤沈下は避けがたい。特に、鉄道輸送のエネルギー効率の良さを認識し、交通体系の総合的あり方を検討していく必要があるのではなかろうか。
(98.02.22.追加)



(統計データ)

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(Feb.18,2011Rev.)