第3章 ゆとりある郷土
第3節 居住環境
第1項 住環境

(1)富山の住宅の現況と課題
   ―世帯変化とのミスマッチの懸念―
    (国勢調査2005年による分析)

 

「住宅・土地統計調査2008年」による分析


持ち家世帯比率
 富山県の住宅の特色は、まず持ち家率が極めて高いことである。
 2005年の国勢調査によれば、全国での持家率が62%であったのに対して、富山では79%であり、都道府県の中で最も高かった。
 富山に次ぐのは、秋田の78%であり、我が国全体では、日本海沿岸地域の諸県で、持ち家率が高い。ただし、大都市圏に属する京都府、兵庫県及び(準)地方中枢都市が所在する石川県では低い。
 日本海沿岸地域では、富山県の自然条件でも触れたように、平野が開け水田農業が発展しており、その管理のため、耕地の近くで定住している傾向が強いためと考えられる。
 なお、三重、和歌山、奈良、滋賀、岐阜もある程度高いが、これらの県については、京阪神、名古屋の住宅地ではあるが借家が立地するには及んでいないためと考えられる。

住宅の所有関係に関するこれまでの分析
1996年持ち家比率との相関が高い指標
1998年アパート・マンションが4割―新設着工住宅平成9年度統計―


 県内各市町村の持ち家比率については、下、立山、朝日、氷見、大門、舟橋、上市で それぞれ90%を超え高くなっている。
 これに対して、富山・小杉がそれぞれ72%で県内では最も低い。高岡、魚津がこれに次いでいる。
  市町村合併によって、県内のきめ細かい情報が見えなくなっている。


延べ床面積
 持家率の高さと同時に、世帯当たり延べ床面積の大きさも富山の住宅の特徴となっている。
 全国の世帯当たり延べ床面積が92uであるのに対して、富山では、その1.5倍以上の146uとなっている。  富山に次ぐのは、福井の140uであり、持家率と同様日本海沿岸諸県で高い。
 なお、持家率が比較的高い、三重、和歌山、奈良、滋賀、岐阜の世帯当たり延べ床面積は必ずしも高くなく、大都市圏周辺の特徴となっている。

住宅の広さに関するこれまでの分析
1998年「住宅統計調査」1993、「国勢調査」1995―広さの分析―
1999年「住宅・土地調査」1998
2004年「住宅・土地調査」2003
2002年「国勢調査」2000
2003年「国勢調査」2000―広さの分析―

住宅の敷地に関するこれまでの分析
2005年広い住宅敷地―2003年住宅土地調査―



 富山県内での世帯当たり延べ床面積については、南砺での197uが最も高く、富山での124uが最も低い。


 当然、予想されることであるが、持家率と世帯当たり延べ床面積の相関は高い。
 日本海沿岸の諸県は、一戸建て比率や敷地所有率が高く、一戸当たり面積も大きい地域であり、これらの指標も持ち家世帯比率と高い相関がある。


 日本海沿岸の諸県で住宅が広さいのは世帯規模が大きいことにもよると考えられる。
 しかし、1人当たり住宅延べ面積に換算しても、やはり類似したパターンが見られる。
 富山は49u/人で日本一大きく、次いで秋田が47u/人であり、全国では36u/人となっている。


 持家比率と世帯規模を説明変数として世帯当たり延べ床面積を求めると相関係数(R2)が0.821となり、かなり高い説明力を持っている。
 このことから、富山では、高い持家率と大きい世帯規模が広い住宅をもたらしているといえよう。
 ただし、持家率と世帯規模の相関(R2)は0.554である。


延べ床面積の分布・・・過大住宅の増加
 次に、延べ床面積別の住宅の分布を検討する。統計の集計区分の制限があり、どの面積の住宅が多いということは誤解を招くため、世帯数の累積構成比を描いたものが右図である。
 この図では、富山の広さが一層際立って見える。150u以上の世帯が43%、200u以上でも22%と大きい。
 50%の中央値は、全国では70-79u、富山では120-149uの区分に入る。


 どの程度の広さの住宅が適当かについては、居住する世帯人員の規模とも関係する。このため、住宅の広さと世帯規模の組合せから広さの充足度を仮に算出してその都道府県間の比較をしたものが右図である。
 富山で生活する小生の感覚では、図の区分で、2程度がちょうど良くて、1台はちょっと狭く、1以下は極めて狭いと考えられ、逆に3以上は広すぎと捉えている。この基準では、富山の住宅の広さは過剰といえるかもしれない。

充足度の計算の説明
2002年住宅面積充足度別世帯構成比の算出方法


 富山県の住宅の広さの充足度の経年変化を見ると、住宅の広さが世帯規模に比して特に大きい世帯が増えている。
 これは、世帯規模縮小の趨勢の中で、住宅の広さが目立ってきている状況といえよう。
 具体的には、富山では若い時から持家を指向している傾向がはっきりとあり、1990年代半ばあたりから団塊ジュニア世代が結婚し、新たな世帯の形成が進んだが、この過程で、元の大きな家に親世代が少人数で残った結果ということになる。
 富山平野に分散して大きな家に住むことのディメリットとしては、家の維持のエネルギー効率の悪さ、交通・その他給排サービスの効率の悪さ、また農地保全に反することなどがあげられる。

 さらにいえば、近年建設される新たな住宅については、資金的制約から都市郊外地のやや狭い新規開発宅地に行われているものも散見される。→(追加分析)

 また、この過程で、富山での住宅建設戸数は、一旦増加したが、現在その需要は一段落しており、建設業のあり方住宅開発のあり方の軌道修正が課題となっている。

住宅の取得年齢に関するこれまでの分析
1999年、2002年若年からの住宅所有―住宅土地統計調査(平成10年速報)―

住宅の築年に関するこれまでの分析
2005年築後40−50年の古い家が多い―2003年住宅土地調査

住宅建設に関するこれまでの分析
2004年貸家住宅割合の増加―新設住宅着工戸数の推移―
1998年住宅建設の動向
2003年、2006年住宅建設の行方―着工戸数の長期的推移―
2005年ミニ・バブル?―住宅建設の動向―
1996年住宅投資の将来見通し(旧)

住宅産業に関するこれまでの分析
1996年住宅産業興し
1996年活躍する地場ホームビルダー

 
借家の増加・・・狭小住宅の増加
 団塊ジュニア世代の結婚・世帯分離と同時に、富山県内でも人口の都市集中(実際には富山市に向かった移動で、差引では、富山市内外の郊外に移動)が進んでおり、この過程で、住宅戸数が増加した。
 戸数では、持家の増加が74%を占め大きいが、伸び率では、民営借家の増加率が9.5%で持家の3.7%を大きく上回っている。この中には、富山市都心での集合住宅(いわゆるマンション)の建設による 都心人口の動向も含まれている。
  ちなみに、これと同時に空家の増加も目立ってきている。

空家に関するこれまでの分析
2005年急増する空き家―2003年住宅土地統計調査―


 上述したように、富山の住宅は極めて広いが、持家以外の住宅の面積については、ほぼ全国平均と同じ分布となっている。
 このように富山の借家については、空間的豊かさを享受していないことに留意しておく必要があろう。



 2005年国勢調査では、世帯の居住する住宅の延べ床面積で、40〜70m2の住宅の構成比が若干増加している。
 これは都市部での賃貸住宅等の増加がもたらしているものであろう。

 実際の世帯の居住状況をつぶさに掌握しないで、軽々に判断はできないし、住宅の広さについては各人なりの考え方があろうが、富山のこれまでの住環境から見れば、質の低下の懸念があるといえよう。



 ちなみに、持家の戸当たり面積は、バブル経済期をピークとして以降、若干低下してきている。
(統計データ)

(Jul.11,2008Add.)



 人口の減少高齢化世帯規模の縮小居住地の変動(都市集中)など生活基盤が大きく変化していく中で、人々にとって、各地域にとって適切な住宅の整備・活用は重要な課題である。
 地域全体としての住宅ストックが理解され、ムダのない活用が実現していくためには、どのようなメカニズムの形成が必要なのだろうか。
 余分な開発の抑制、このために必要な土地利用規制、あるいは都心立地への優遇、さらには住宅流通市場の整備などいろいろな方策が組合されていく必要がある。
 こうしたことがうまく制御できなければ、都市周辺部に狭小な住宅が増えていく一方で既存の郊外住宅地も都心もゴーストタウン化していく虞が大きい。

(統計データ)
(統計データExcel)


 

富山の持ち家率は全国一高いか
―2010年国勢調査1%抽出集計―

 2010年国勢調査の1%抽出集計で、富山の持ち家率は81.5%で全国で最も高く、富山に次ぐ秋田の78.5%とも大きく離れているという結果が出た。

 これについて、北日本新聞は、県統計調査課の「過去に暫定値と確定値でかなり違ったケースもあり、ふたを開けるまでは分からない」というコメントを引用して、「富山”暫定”首位」という見出しで紹介している。
 このような統計的振れの可能性は、抽出調査には必ずあり、多くの調査が暫定値であることを認識している必要がある。
 しかし、このことを指摘することはめったにない。それは、後日改めて真実と見られる数値が発表されることはないからであり、国勢調査では、改めて全数集計の結果が発表されるため、このようなコメントとなった次第である。
 1%の標本の抽出が適正にされているとして、富山と秋田の順位が逆転する可能性は、いかほどであろうか。これは、母集団比率の差異検定(異集団それぞれの比率の比較の場合)で求めることができ、それぞれの持ち家率、サンプル数を81.5%,3607世帯、78.5%, 3806世帯として、0.06%となる。仮にこの公式が分からなくても、それぞれ平均81.5%標準偏差0.666%、平均78.5%標準偏差0.647%で値を発生させ、1回毎に比較して比率が逆転する回数を数えるシュミレーションで10万回程度試行すれば、およそ一致する値を求めることができる。ちなみにここでの標準偏差は√(p*(1-p)/n)で求めることができる。
 この結果からみれば、逆転する可能性がまったくないとは言えないが、まずないと考えていいのではなかろうか。
 

 ところで、持ち家率は、過去の国勢調査でも分かるし、「住宅土地統計調査」でも参照することができる。
 これまでの富山県の値を見ると、2008年の住宅土地統計調査の値は、若干低すぎる値がでており、今回の1%抽出の値は、高すぎる値がでているように推測される。
 持ち家率は、長期的に低下する趨勢にあると考えられるが、2010年時点では団塊ジュニア世代の世帯形成後の住宅取得が一段落したタイミングと考えられ、持ち家率が若干上昇してもいいのかもしれない。
 多様な統計の発表毎にこのような考察を行う必要はないが、時には確かめ、統計の持つ意味(振れの可能性)について認識を深めておくことは必要であろう。
 最後に、上述のような理由から、富山県の持ち家率は、全数集計で80%程度となるのではと推測するが、どのような結果になるであろうか。


(統計データ)

(Jul.12,2011)



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(Jul.12,2011.Rev./1996.Orig.)